68年5月のバリケードは未だフランスを二分する(後半)

「68年5月のバリケードは未だにフランスを二分する」(後半)

 しかし、こうした記念には、洒落た悪ふざけも存在する。デザイナーのソニア・リキエルアニエスbは、あらゆる雑誌で1968年5月に対する見解について議論しているし、どのチャンネルをつけても、ドキュメンタリーと討論が流れている。さらには、ヴェトナム生まれのジャン・ディン・ヴァンは当時自分が作ったシルヴァーの敷石のペンダントを再び発表した。その目的は、「自由の40年を祝うため」であるが、彼の場合は、祝うのは自らの成功だろう。ちなみに鎖がついた最も小さいもので、275ドルする。
 店の色がホットピンクの高級グルメ店であるフォションでさえ、時流に同調している。フォションが販売しているのは、「68年5月茶」と呼ばれる中国産の緑茶が入ったメタルボックスで、それには当時のスローガン(「詩は通りに存在する」や「想像力が権力を奪う」)などが添えられている。そのお茶は、「異国のフルーツ、グレープ・フレーツ、微量のレモンの皮、薔薇の花びらの微妙な香り」と謳われているが、フォションは、それを「革命の香りのするお茶」と呼ぶ。価格は、約23.5ドル。

 サルコジ自身、その精神に入っていこうとしている。4月に彼は、コーンバンディと合った。コーンバンディは、『68年を忘れろ』という自著を贈呈し、それにいたずら書きを添えた。「ニコラへ。想像力は権力を奪う、それはいつのことだろうか?挨拶申し上げます。ダニー」サルコジは、笑って、「読んでおくよ」と言っていたと、コーンバンティは述べた。

 「68年を忘れろと私は言う。それは、終わっている。今日の社会は、1960年代の社会とは何の関係もない。われわれが、反権力を自称していた時、闘っていたのは、全く違う社会だった」と彼は言った。

 ジャン・ピエール・ルゴフは科学研究国立センターの社会学者であるとともに、『68年5月、不可能な遺産相続』の著者である。彼によれば、1968年5月は、「誰のものでもない。」しかし彼は、世代間の深い断層、すなわち大きな隔たりを見出す。次のように続ける。「圧倒的多数の学生が、歴史の舞台にはじめて主役として登場した。そして実証主義進歩主義イデオロギーが存在した。」

 現在、フランスは不況で、「若者は全てを恐れている」とも彼は述べた。

 ナンテール校は、パリのはずれにあり、生徒数3万2千の不規則に広がった大学である。そこで、図書館のポスターが宣伝していたのは、「分析の現在的有効性と若干の修正の必要」と題したマルクスについての講義だった。ある学生は、マルクスの頭にXをつけ、「こんなものは全て終わりだ!」と書いた。

 1968 年には、学生が望んだのは、両親よりは自由で、よりよい生活だったとすれば、今日の学生は、今のままの生活を送ることを望んでいる。トマ・ワスタンは、 24歳で、人事管理を勉強しているが、彼によれば、学生は大きな社会の映し鏡であるということだ。「40年前は、全てを変えることが望まれた。今日学生は確かに自己中心的ではないが、彼らは手にしているものを失うことを恐れているのだ。今日、デモでは、『体制には触れるな』と言う。」

 ラファエル・フロワドは22歳の芸術史専攻で、ポニーテールでひげを生やしている。彼によれば、1968年の本当のインパクトは、政治的なものではなく、個人的なものである。

「僕たちにとっては、これら全ては抽象的です。僕たちが育ったのは、大部分の両親が離婚して、子供たちはネオ・リベの攻撃の矢面に立っている世界です。1968年によって、両親たちは変わりましたが、変わるはずだった世界は、変わりませんでした」と彼は述べた。

 22歳のグレゴワ―ル・ル・ベールは言う。「今日、彼らのようには、僕たちは新たなシステムを構想することはできません。しかし、世界をずっとよくすることは可能です。」と彼は、環境問題や社会的正義を引き合いにだした。

 ヴィルジニィ・ミュレは、21歳の歴史専攻である。「私たち皆が心配しているのは、このフランスでどのように働くかということよ」と彼女は述べた。1968年5月については、「こんなにもすると、少しやりすぎね。例の老人たちが、自分たちを祝福しているだけだわ。」

■コーンバンディが自著に添えたのは原語では次の通り。”Pour Nicolas,l’imagination au pouvoir, c’est pour quand? Salut,Dany Cohn-Bendit” 彼がサルコジとの面会後には、「心配も安心もしていない。政治的な相違点は存在する。興味深いのは、彼はヨーロッパに仕えるフランスの大統領に本当になろうとしていることで、これは今までになかったことになるだろう」と述べている。
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